遠藤文庫

定期連載「雪の彫刻たち」第三部その6
2002.02.11

今日のBGM「さいくりんぐる」スノーモービルズ

「どうゆう感じで歌えばいいかね?」「曲がかわいいからかわいい感じでいいんでない?」「うん。わかった。ってキリハラの歌い方、棒歌いじゃんか。」「いいからいいから。」「ハハハ…。」

1995年。初夏。キリハラ宅。外からは女子高生が体操する掛け声が聞こえてきていた。東京の5月は少し暑かった。僕たちは、「charmbient」を作ってから間髪いれずにすぐ次の作品を作っているのだった。前の作品の勢いがそうさせたのかもしれないが、なぜ作ろうと思ったのかはよく憶えていない。僕は台所で、4トラックのMTRを目の前に、ボーカルを録音していた。曲名は「さいくりんぐる」といった。リズムはテクノというか、ジャングルというかそういったものだった。ただ、コードとベースラインはアンビエントのものだが、メロディーは童謡という、今まで聞いたことのない曲だった。

詩には盛岡の町並みや風景がそのまま取り入れられていた。朝顔瀬橋とは「夕顔瀬橋」という実在の橋で、そこから見える岩手山の雄大さは格別だ。その詩の中でも僕が一番好きな部分がある。「三叉路で別れても道はまたつながるよ」というところだ。

「いい詩書いたねえ。」「うん、まあね。」

歌いながら僕は、「素晴らしい作品ができるかも。」と思っていた。この曲とあと1、2曲くらいしか出来ていなかったけれど、この先に何か素晴らしいことが待っているのではないかと、そう僕は思っていた。

・・・つづく

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