遠藤文庫

定期連載「雪の彫刻たち」第三部その4
2002.02.06

今日のBGM「フニクリ・フニクラ」細野晴臣

「ポップなアンビエントだろう?どうすっかなあ。」キーボードの前に座り、僕は悪戦苦闘していた。歌曲構造の曲は嫌というほど聴いてきたし、慣れていた。アンビエントは曲にAメロ、Bメロ、サビという構造はない。多くはワンコードかツーコード、リフの繰り返しだ。メロディーというメロディーもないことが多い。

テクノポップ世代、そして歌謡曲世代として、アンビエントなるものとどう折り合いをつけるか。それが問題だった。「いや、待てよ。僕が今まで聞いてきたものの中に、いっぱいヒントがあるじゃないか。」僕は昔のレコードを引っ張り出して片っ端から聞いた。細野さんのモナドレーベルの一連の作品、フィルハーモニー、ミカド、テストパターン、インテリア、イーノ…。「歌曲構造のアンビエントあってもいいし、心がキュンとなる切ないアンビエントってありだよな。そうだよ!」偉大なる先達の偉大なる遺産にヒントを与えられた僕はわだかまりが消えた。

「好きなことやればいいんだ。」それからは次々に曲ができ始めた。何かがふっ切れたように僕は曲作りに没頭した。

・・・つづく

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