遠藤文庫

定期連載「雪の彫刻たち」その3
2002.01.04

今日のBGM「NEW ROSE」The Damned(The Star Club)

「ブイ~~~ン」教室に設置した楽屋にドライヤーの音が響く。「やっぱりダイエースプレーはよくおっ立つなー。」俺は前かがみの姿勢で髪を立てながらつぶやいた。今日は6月の校内定期演奏会。今までの練習の成果を他の生徒たちに見てもらう、ま、ちょっとしたGIGのようなものだ。梅雨時、少し空気がむしむしした。客の入りはまあまあ。といっても仲間内がほとんどだった。そろそろ俺の出番が近づいていた。トリだ。これで夏休み前のすべては終わる。「そろそろいくべや」ボーカルのスージーが5センチもある靴底のラバーソールを鳴らして、楽屋を飛び出した。「うん」The Whoの長ティーを少し気にしながら俺たちはステージへ向かった。

「ドドダド ドドダド ドドダド ドダダダダン」「オイ!」スージーの掛け声で俺たちの一曲目「New Rose」が始まった。スージーは思いっきりだみ声で客を挑発する。金髪ベースのトミーさん(キリハラではない)は節目がちにしかし、熱くベースを唸らせている。俺は、「いつもより息が苦しい」そりゃそうだ、今日5バンドくらい掛け持ちしてる。体力の限界を感じていた。息が上がってきた。「く、苦しい…。」

最後の曲「Anarchy in the U.K.」をやっているとき、ついに限界がきたようだ。「ぼう、ばべば(もう、だめだ)」プチ言語障害になりながら必死で最後の盛り上がりにたどり着いた。タムを回し、スネアを連打し、シンバルをばしばし叩いて、最後にバスドラムを蹴っ飛ばして、終了。

そのまま廊下に崩れるように倒れこんだ。「ひゃっこくて、気持ちエー」ほっぺを通して、廊下の冷たさが伝わってきた。それでも風は梅雨のせいで、なまぬるかった。

・・・つづく(今日はキリハラの出番なし)

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