折原文庫

東京クールスファイブ物語(第16回)
2002.01.28

第十六回~東京クールスファイブあわや乱闘!?~

この連載にしてみると長いが、実際にはあっという間だったライブが終了した。

控室に戻ると、メンバーみんなが間違えたところや、思い掛けない聴衆の盛り上がりなどについて高揚したまま話し合う。オレは、バンドを始めてからやったライブの中で、もっとも盛り上がったライブがこのクリスマスパーティーであることを力説した。ちなみにその記録が3年経った現在もやぶられていないというのは喜ぶべきか悲しむべきか。楽器を片づけながらそんな会話が延々とくり返される。

すっかりパーティーが終了し、体育館の片付けが完了するころ、控室に戻ってきたリーダーから「地元バンドの誰かが気持ちよくお疲れさまの挨拶をしたリーダーに向かって何やらイヤミったらしいことを言った」という事を聞いて、リーダー以上にイカるメンバーの面々。あわや乱闘事件ぼっ発か!?と思われるも、そこはなんだかんだ言って余裕あるオトナの東京クールスファイブ。彼らの気持ちもわからないではない、という話になった。

思い返せばオレにもそんな頃がなかったわけでもない。千葉の田舎でバンドをやってた高校生のオレは、たまーに地元にプロのバンドがやってくるようなライブイベントがあれば、若気のいたりでライバル心むき出しでハリキったものだ。

だいたい今回のオレらのライブを冷静に思い返すと、まず石田小吉のニューバンドではなかったことで裏切り1つ。コピーバンド(しかも銀蠅など)ということで裏切り2つ。そしてなんといっても想像を絶する演奏力の低さで裏切り3つ。嗚呼、こりゃあなんか知らんが恨まれても仕方がなかろうなー。ごめんよ。

と、まあそんなロックンロールバンドにありがちなエピソードも色を添えつつ、実行委員会のみなさまにお疲れさまの御挨拶。みなさん大変喜んでくれていて、こっちが嬉しくなった。さあ、これでおわったぞー!疲れた疲れたー。

この後リーダーの友達に本日の我々のねぐらへご案内していただく。なんと地元の神社。いいねえ。軽く打ち上げもあるそう。今日は内輪で一杯呑んで気持ちよく寝ますか!

と、この時のオレは、これからがある意味本当のステージであるなどとは、夢にも思わなかったのであった。

(つづく)

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