折原文庫

東京クールスファイブ物語(第11回)
2002.01.18

第十一回~伝説のバンド、オンステージ!! その1~

いやあ、長かった。連載11回目にしてやっとこの部分まで辿り着いた。そう、ついに我ら東京クールスファイブのステージの幕開けである!!

DJクンちゃんのプレイを腹いっぱい楽しんだオレらは、ディスコ大会の終了を待たずに控室に戻った。そう本日のクリスマスパーティーの最後のイベントとなるオレたちのライブの用意のためである。控室に戻り、軽く一休みすると、それぞれの楽器を持ち退出するメンバー。会場に戻るとディスコ大会はすでに終わり、それぞれ会話にざわめいていた。

心地よい緊張の中、メンバーはセッティングを始める。アンプ直結だけのシンプルなセッティングのオレはみんなより一足早く準備が整った。振り向くと遠藤さんがドラムの位置を決めていた。サトーさんはキーボードをセッティング中だ。Pさんやリーダーも定位置で準備が整いつつあった。ふと会場に目をやると、さっきのざわめきは意味を変え、人々はオレらを中心とした扇形に集まって、これから始まるショーを心待ちにしていた。オレは心の中で「いや、みんなオレらの事はほっといてくれていいから!期待しても何にもないから!」と叫んだが、また一方で「…まあ、もうしょうがないか…」と決心もしていたのだ。

客席から見ると東京クールスファイブの並びは、まず中央後方に遠藤(なぎら)ドラム。前方は左からキーボードのサトーさん、ベースのオレ、ギター(ミニのモズライト)のリーダー、一番右がコーラス&タンバリンのPさんとなっている。ドラム以外には全てマイクが立てられた。

準備は整った。リーダーが後ろを振り返り全員のOKを確認するとマイクに歩み寄り、

「はるばる東京からやってきました!」

と言った。大歓声があがった。遠藤さんがカウントを取る。そう一曲目はデュランデュランのナンバーだ。ドラムとコーラスとボーカルのみのイントロが、リハーサルの時よりも力強く体育館を満たす。Pさんが手拍子を煽ると体育館全体が手拍子に加わった。次の瞬間ベースとキーボードが演奏を始めると、そこにグルーヴが生まれた。

そう。その日のライブの始まりはそんなふうだった。

(つづく)

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