折原文庫

東京クールスファイブ物語(第9回)
2002.01.06

第九回~「ロックバンド、ゲームでヒヤ汗」の巻~

目を真っ赤にしたオレが体育館に到着すると、そこにはさっきとは打って変わって、いかにもクリスマスパーティーらしく、ゲーム大会が始まっていた。どんなゲームかと言うと、まず参加者は全員男女のペアになり、司会から出題されるクイズに不正解の場合は二人がのっている新聞紙を半分に折ってゆくというルールだ。つまりこの新聞紙の陣地から出ないようにするというゲームである。

もちろんこのゲームの盛り上がりは、新聞紙が小さくなって狭くなってくると、男性が女性を抱き上げたりおんぶしたりするところにあるわけだ。

と、こんな感じの出会い系ゲームが、オレがコンタクトと格闘している間に始まっていた。しかも東京クールスファイブのオレ以外のメンバーもちゃっかりと地元の人とペアを組んで参加しているではないか!さらにPさんなどはブロンソンヒゲをつけて何故か男役として女性とペアを組んでいた。それにしても、こんな恥ずかしいゲームやりたくないと思いつつも、自分ひとりだけ参加していないと妙にさみしく、そして切なく感じるのは何故?

そんなオレのジェラシーにも似た感情を知るか知らぬか、気付くとゲームは終盤になった。脱落ペアが続出する中で、最後の5ペアがステージ上に呼ばれたのだが、なんとリーダー&Pさんのそれぞれのペアが勝ち残っていた。

思いがけぬ結果に動揺する本人たち。

そりゃそうである。地元のためのクリスマスパーティーのゲームで全く地域密着でない人々が勝ちのこってしまったのだ。しかも一人はブロンソンヒゲのシールをつけた女性である。どう考えても突っ込みどころは山のようにあるが、冬の体育館に漂うこの異質な空気感の前に司会者も突っ込むタイミングを失っていた。さっきの盛り上がりが随分遠くに感じられるこの12月の夜長。なんとなく最後は手っ取り早く終わらせた感もあったが、この後なんとかゲームは終了した。

体育館全体が苦笑いしているような気がした。

(つづく)

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