折原文庫

風noteのはじまり~第二部~
2001.11.08

どっどどどどうどどどうどどどう
甘いアレンジ練り直せ
どっどどどどうどどどうどどどう
しょっぱいコーラス録り直せ
(「風noサト三郎」より抜粋)

「風景観察官と夕焼け」の後、頓挫したポリスターからのアルバムは、シンクシンク仕切りとなって再スタートする。曲は山のようにあったが気持ちの問題で、とりあえず評判の良い曲を残し、それ以外は新しく作るところからはじめた。

そんなこんなである程度曲が出揃い、スタッフとアルバムへのミーティングがもたれた。つまりこの時点では曲に歌詞はついていない。皆の意見はアレンジに集中した。オレらが「風景観察官」以降試していたサウンドは、すでにテクノポップとは呼べなかったし、単純に説得力に欠けていた。ファーストのようなサウンドにした方がわかりやすいという者もいたが、進歩のない事はやりたくなかった。またテクノポップと縁遠い音楽をやりはじめることはスタッフとの共通言語を失うようなものでもあった。つまりオレらの好んで聞いていたような音楽を理解できるスタッフは少なかった。ミーティングは解決を見ず、アレンジ再考となった。

ある日の晩、突然寺田さんから電話があり飲みに誘われた。行ってみると一緒にマイクロスターの二人がいた。打ち合わせの後だったとのこと。寺田さんがふいに切り出した。

「さっきちょっと話してたんだけど、佐藤君にスノモーのサウンドプロデュースやってもらったらどうかな?」

オレはちょっと考えた。スノモーはもともとnice musicに影響を受けているユニットである。日頃から飲み仲間でもある佐藤さんはオレらの好きな音楽も良く知っている、というかこの頃のオレらのフェイバリットはそのまま佐藤家のCDラックに揃っていた。正直オレは以前から佐藤さんにスノモーのプロデュースをやってもらえたらなあと思っていたのだが、しかし仲良くなるにつれてそういう話もしにくくなるものだ。今晩は寺田さんもいるし、ということで思い切って頼んでみた。

「いいよ。」

何とあっさりオッケーは出た。オレは佐藤さんが関わってくれるというだけでものすごく心強く感じた。その場で早速レコーディングの進め方が話し合われた。プリプロを佐藤さんのASTRONOTE STUDIOで始めること。シーケンスデータのトリートメントから佐藤さんが関わってくれること。生ドラムで行くこと。歌詞をまず用意することなど、それらは多岐にわたった。いままで上手く回らなかった歯車が突如動き出した。

―――数ヵ月後。

オレと遠藤さんはスタジオへ急いでいた。もうすでに通い慣れた道である。スノモーにとってレコーディングは当たり前のものになっていたが、この新しいアルバムのレコーディングは今までとは全く違っていた。何しろ今日もASTRONOTE STUDIOには佐藤さんが待っていて、いつものように三人でくだらない冗談を言いながらレコーディングをするのだ。新しい音楽が生まれていた。夜になると必ずビールで乾杯した。Pさんが色々な楽器を弾いてくれた。ごはんもつくってもらったりした。近所で火事があった。みんな短パンだった。そうだ、此処が「風note」のはじまり。

(第二部 完)

■あとがき
いや、これでホントにしばらく書かないから(笑)。ところで今晩で先行発売終わります。ご利用ください。

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