折原文庫

カレーのうまい喫茶店~「カレーと私」シリーズ~
2003.04.12

本日もメシのネタでいってみますか。

この前の昼間、原宿を歩いていたらハラがへった。裏道を通っていたのだが、ふと見渡すと小さな喫茶店があり、店の入り口の黒板に

「ランチ とり肉の挽き肉カレー \500」

と書かれていた。

正直オレは挽き肉カレーはそんなに好きな方ではない(と言ってもカレーなら基本的に全部大好きだが)。どちらかと言うと具が大きくゴロゴロ入っているタイプが好きだ。挽き肉カレーのあの歯ごたえのなさがどうも消極的にさせる。「味はうまいがアゴが疲れないカレー」というのがまあオレの評価であるわけだ。

まあ今回は別に挽き肉カレーがどうのこうのという話しではない。

オレはその時は取りあえずカレーを食おうと決めていたし、500円というリーズナブルな価格設定にもひかれ、とりあえずその店に入ろうとした。そしてガラスのドアの前に立って驚いた!その喫茶店は恐ろしく狭かったばかりか、6人で丁度いいぐらいのスペースに10人ぐらいの人がゴチャっと入って、しずかにカレーを食っていたのだ!!

正直ひるんだが、ドアにかけた手が勝手にその未知の世界へのトビラを開いてしまったのである。いらっしゃいませと言われるが、白髪の太っちょマスターはカウンターで大忙し。ウエイターなどいるわけがない。どうにか隙間を見つけ座りメニューを探すが、それすらもない。マスターがカウンターの前にすわってカレーを食っている客に「すいません」といって水をわたしたと思ったら、その客がオレに「はいどうぞ」と水をわたしてきた。スゴイ店だ!

とまどって静かにしているとマスターがオレに声をかける。

マスター「量はどうします?」
オレ  「……。」

またが、ココイチの悪夢がよみがえる。オレはココロの中で『たしかオレがいつも食ってる量は300gだから…』とかなんとか繰り返していたところに

マスター「普通でいいですか?」
オレ  「ええ、普通で!」

どうやらこの店はグラムでコミュニケーションしていないようだ。ホッとひといきつくと、すぐさまカレーが出て来た。普通と言えども結構なゴハン量だ。カレーは思ったより大粒の挽き肉が入っていて、さらに大きな乱切りニンジンくんが数個。ニンジンの彩りがやけに食欲をそそる。うーん、嬉しい誤算というやつだ。

明らかにいま洗ったばかりですという感じに濡れたスプーンを手にとって一口たべると、むむ!うまいではないか!コクのあるルーに、いわゆるスタンダードな辛さ。ニンジンもやわらかく煮えていて、味がしっかりある。やるなマスター!気に入った!

しばらく食って落ちつきを取り戻したオレはあたりを良く見回したが、ここの喫茶店はやけに繁盛している。ものすごく回転率がいいのだ。入ってカレーを食って帰るという単純作業がすごいスピードで繰り返されている。しかもマスターと客の会話を聞いていると常連が沢山いることに気づく。さらにオレは気が付いた。後から入ってくる客の注文もこなれていて、「中盛りね!」「オレはちょっと多めで。」とか、微妙なニュアンスで注文をかけてくる。だいたい「中盛り」と「ちょっと多め」の差はいったいどのくらいなのかよくわからない。さらに高度な注文になると

「マスター、オレ大盛り少なめで!」

とか言うヤツがいる。オレは即『え!? 多いの?少ないの?どっちなの?』と松浦アヤヤ状態になったが、よくよく考えれば「カレー大盛りでメシ少なめ」という意味であることがわかった。

ちなみに大盛りというと信じられないほどの量が出てくる。しかもどんな量でも500円のようだ。学生食堂のようだなと思った。

とにかくそんなこんなでオレはこの店がたいへん気に入った。また行くことにする。次回は店に入るなり「普通で!」と元気よく答えたい。

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