遠藤文庫

「仙台ライブ珍道中その2最終回」の巻
2001.12.13

ライブ会場に戻ったらマークと謎の黒人女性LEEさんが来ていた。ライブまであと1時間。ライブ会場をチラッと覗いてみるとお客さんはちらほらで空席が目立つ。「げっ!まじかよ!やる気なくすなあ!」その日は隣の夢メッセ仙台というイベント会場で中古車フェアだかが開催されていて、駐車場のチェックが厳しく、この会場もそれの余波で気安く車を止められない状態だったのだ。それでも会場には事前にチケットを渡していた友人たちやハセさんも見にきてくれていて「これは盛り上げないとあかん!」と僕の生来のエンタテイナー魂に火が付いた。「どうしてくれようか!」朝の気持ちがまたよみがえった。

楽屋へ行き、みんなステージ衣装に着替えた。僕はサンタクロース。鏡を見ると全然違和感がない。LEEさんもマイちゃんも「似合いすぎ!」を連発。僕は心の中で「今日はいける!」と確信した。マークにもサンタクロースの格好をさせた。まんざらでもない様子だった。僕と二人で鏡の前に立ち、「You look like 宴会おやじ」と言ってやったら「I'm 宴会 master」と言ってちょっと笑った。

僕らの出番がついにやってきた。ステージへ出て、ドラムのセッティングをしていたら客席から子供の声で「何あれー」「だれ?」と聞こえてきた。僕は心の中で「つかみはオッケー!」とほくそえんだ。こんな格好で出演したバンドは他にはいない。そして、会場には僕たちが一曲目のはじまる前にかけてくれと頼んでおいたマイケル・ジャクソンの「ビリー=ジーン」が響きわたった。僕はそのビートに合わせてスティックを高く振り上げカチカチ合わせた。もちろん、顔を左右に振り、目をつむり、眉間にしわを寄せながら。それにつられて客席の人たちも手拍子をする。さっきより少し増えているようだ。

 

そこでGOくんの掛け声「ワン!トゥー!スリー!フォー!」に合わせ、一曲目がスタート!「イエーイ!決まった!」順調な滑り出し。GOくんのギターはいつもよりでかい音で、フレージングもリズムも最高だ。マークのベースもべきべきチョッパー全開で攻めまくる!キーボードのマイちゃんもギターとベースのすき間をうまくぬうフレーズで全体を引き締める。LEEさんは後ろのほうで控えめに踊っていた。僕はといえば、もう水をえた魚のように好き勝手叩きまくった。「ああー!気持ちいい!これがライブの醍醐味だぜ!」と思ったのつかの間、僕の手からスティックが飛んだ!「あ!」と思ったが何食わぬ顔で叩き続け、曲間でギターのGOくんに話し掛けるふりをして取りに行って事なきを得た。

一番すごかったのは最後の2曲、ボーカルのLEEさんのダンス!練習ではすごく控えめに歌っていたのだが、さすがに本番に強いイギリス人だ。歌いながらマドンナ張りのくねくね踊りを披露してくれた。それにつられ僕らの演奏にも力が入る。そしてファンキーな最後の曲が終わり僕らはインタビューを受ける。

僕はスポークスマンとして受け答えした。「このバンドの結成のいきさつは?」「あ、街を歩いているときにマークにナンパされまして…」「おいおい」とつたない日本語で突っ込みを入れるマーク(笑)。「この格好には何か意味があるんですか?」「前からしてみたかったもので…」などなど。そして最後にばっちりスノモーの宣伝もし、ライブは終了したのだった。

みんなと別れ、車に乗り込む。朝にセットしたはずの無造作ヘアは汗にまみれてもっと無造作だった。「今度はスノモーで。」心に固く誓った冬の一日だった。

 

…おわり

 

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